旅の途上

オランダで「小学校教員になるまで」と「なってから」の足跡。

Day687 ~制限があるから道を拓ける~

イギリスに行く道中で、イギリスに関する歴史の本を読んだ。

ヨーロッパ諸国は、香辛料を得るために危険を冒して航海するしかなかった。なぜなら、東ヨーロッパから中央アジアまでは、オスマントルコが牛耳っており、経済力でも軍事力でもヨーロッパ諸国は敵わなかった。だから、陸路を避け、アフリカの喜望峰を回ってインドへと向かう航路で香辛料を取りに行った。

その中で、コロンブスがアメリカ大陸に到達した。あくまでコロンブスはアメリカ大陸をインドの東側だと考えていた。その偶然から、アメリカ大陸でポトシ銀山が発見され、ゴールドラッシュが起こっていく。オスマン帝国という強大な力を持った敵がいたからこそ、制限があったからこそ、新しい道が拓かれている。

イギリスも同じだ。一時は現在のフランスにまで領土を広げたものの失地王の不名誉な名前で有名なジョン王の時代に、ヨーロッパ大陸の領土を失う。しかし、名誉革命や産業革命を経て、カナダ、オーストラリア、香港、インド、アフリカなど、世界中に植民地を持つ大国となる。まさに大英帝国。

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しかし、イギリスが世界の覇権を握るまでになったのは、マグナ・カルタという国王の権限を制限し、立憲制のもとになる大憲章が生まれたことによる。国王の都合で勝手に税金を上げたり下げたりしにくくなったため、エリザベス女王の時代には国民からの税金だけではなく、奴隷貿易と海賊により強大な経済力をつけていく。やり方がどうだったかは別として、制限があったからこそ、議会制民主主義が発展したし、産業革命がおこるには必要不可欠だった経済力を持つことができた。

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第二次世界大戦直前にイギリス国王となったジョージ6世は、幼いころから吃音症だった。しかし、吃音症だったからこそ、第二次世界大戦を戦い抜くために国民の心に響くスピーチをラジオ放送からすることができた。

映画『英国王のスピーチ』予告編

第二次世界大戦中の首相であるウィンストン・チャーチルの映画のワンシーンで、戦い続けるか和平交渉かの決断に揺れるウィンストンに、妻がこんなことを言っている。

You are strong because you are inperfect.

You are wise becase you have doubts.

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そして、ウィンストン自身は、こんな言葉を残している。

Success is not final, failure is not fatal.

It is the courage to continue that counts.

いつの時代だって、道を切り拓いて歴史の表舞台に出てくる人は誰しも、弱い存在だったのかもしれない。ただ、勇気を持っていた。

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (字幕版) - 予告編